近くて遠い中国語 -日本人のカンちがい-

中国と日本の違いを面白く取り上げる本はいろいろありますが、この本はその中でもオススメです。中国の都市で少しぐらい生活していると、日本ではしらなかった生活の習慣とか日本と中国の漢字の違いとかがわかってきます。

留学生なら「そうそう、あるある」とうなずく内容。たとえば「手紙」とはトイレットペーパーのこと、なんてね。そこまでがよくある文化紹介本ですが、この本はさらに一歩突っ込んでいるところがすばらしい。

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例えば中国の簡体字は、おそらく毛沢東時代に識字率をあげるために推進されたんだろうなぁ、とここまでは想像できるレベル。ではそれはいつ?どういう経緯で現在にいたるのか? 時代は竹のカーテンで外国からは様子がうかがい知れないころのこと。

一部を紹介すると、漢字改革が最初に主張されたのは1909年に中華書局の創設者、陸費逵さん。その後1920年代に当時の学者さんたちが宋から元の時代いかけて印刷された12種の書物から当時の簡体字を集めたそう。その後1935年に中華民国政府が324字からなる「第1批簡体字表」を公布。

個人的には中華民国政府の公布がスタートだったというのが興味深いところですが、当時はほとんど普及しなかったのだそうです。

さらに抗日戦争期に中国共産党が成立してから本格的な普及活動をおこない、1956年公布された「漢字簡化方案」ですでに頻繁に使われていた230の簡体字を採用。1964年にヘンやツクリの簡略化が詳細に規定されて「簡化字総表」が簡体字の基礎となったこと。けれどその後簡略化が勝手に行き過ぎて混乱してきたので1977年に「第2次方案」として民間で使われている未公認の簡体字を世紀の自体に認定しようとしたけれど、なんだか逆に混乱して1986年に廃止されている。

ちょっととりあげたエピソードだけれど、なかなか中国人でも知らない「トリビア」的な話題、日本と中国のコトバをめぐる意識の違いなどを歴史的な経緯や著者の経験から面白く紹介されていて飽きない。

留学のような経験で徐々に得られる知識をギュッと濃縮してさらにスパイスを聞かせたような一冊。中国に興味がある方なら読んでおいてソンはないです。